みなさま、お待たせしました。

こちら「THE MUSEUMS SHOP by East 」の記念すべき初回に登場するのは、オーストリアの首都ウィーンにあります「Secession セセッシオン(分離派会館)」です。

セセッシオン(分離派会館)と僕たちが、実際に仕事を共にしたのは、2019年のクリムト展の時でした。

この、とても大きな展覧会では、東京と、豊田の二会場に、合計77万人以上が、足を運んでくださいました。

 そこに展示された豪華なクリムト作品のラインナップは、「接吻」を所蔵する事でも有名な、ウィーン、ベルヴェデーレ宮殿のオーストリアギャラリーから来たものでした。分離派会館は、そのベルデヴェーレのグループの一員なので、クリムトのベートーヴェン・フリーズの複製も、この展覧会に展示されたのです。

ミュージアムショップは、クリムトが好んで使用した「ゴールド」と、その対比としての「ホワイト」をテーマカラーに全体をつくっていったのですが、その色のイメージは、分離派会館の建物からも強く影響を受けていたと思います。

このショップでは、数回にわたり、分離派会館から、ポスターを直輸入して販売をしましたが、当時、ウィーンの在庫には限りがあり、追加のオーダーに対して、展覧会期間中には、入荷が間に合わないものもありました。それでも数百枚のポスターを輸入した事を覚えています。

今回、世界のミュージアムに、私たちから出したメイルには、ありがたいことに、ほとんど返事をいただいたのですが、その中でも、翌日すぐに返信をくれたのが、ここ、分離派会館でミュージアムショップのマネージメントをしているガブリエルさんでした。

 最初のやり取りは、今年、5月頃の話で、その頃はまだ、新型コロナの影響で、分離派会館も閉館中でした。オーストリア政府の再開条件は、ミュージアムの来館者1人に対して必要なスペースが、10平方メートル。同時入館者数の上限は100人と言われている、と書かれていました。
「ヨーロッパの国境も閉鎖中という事もあり、海外からの来館者がほとんどいない状況の中、1日の入館者数が約50人に届かない日もあるだろう」と、綴られていました。6月以降、再開し、少しずつ来館者数が戻ってきていたけれど、ここに来てウィーンも、感染者数が増えてきているそうです。「でも、医療体制には自信があるから、きっと大丈夫!」と明るく、こたえてくださったのがとても印象的でした。

 今回は、その、分離派会館(セセッシオン)が送って来てくれたポスターをご紹介するのですが、その為には分離派会館の事を、もう少しおはなししながらにしましょう。

 先に触れたように、2019年の春から秋にかけて開催された、「クリムト展」と「ウィーン・モダン」展。

このふたつの展覧会に付属するミュージアムショップを、East社は、担当しました。

同時期の開催、それも同じウィーンがテーマ。そして当然ながら、違う新聞社の主催でしたから、同一会社が両方のショップに関わるというのは、あまり前例のない事だったと思います。

 でもこの時は、どうしても、どちらのショップも担当したい理由がありました。その理由は、いつかここに書けるかもしれませんが、今は触れずに。とにかく、そのふたつの展覧会の準備の為に、この三年のあいだに、僕らは二度ウィーンを訪ねることになりました。

 その時の写真の中に、今回の主役「セセッシオン」もありました。

僕は、ここ(セセッシオン)が大好きです。
思えば、さかのぼること10年以上前、2007年に、East社、最初の海外研修(注1)で訪れたNY。その時、立ち寄ったノイエギャラリーでは、偶然クリムト展が開催されていました。その後、映画にもなった有名なクリムト作品『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』が、当時の史上最高額で落札され、ノイエギャラリーに所蔵された頃でした。その金額は確か150億円を超えていたと思います。
注1) 株式会社Eastは、当時、社員は二人。「二年に一度は海外研修に連れて行く!」と決め、それ以降、この10年で6回実施されています。

その展覧会場のひと部屋に、クリムトによるベートーヴェン・フリーズの複製が展示されていました。解説もよく読まず、それが、複製である事も理解しないまま、とにかく目の前に広がるクリムトの世界に、惹き込まれていました。

 その後、2012年。ウィーンの街すべてが、クリムト一色になった、彼の生誕150年の記念イヤーの時、ここ分離派会館(セセッシオン)で、はじめて本物のベートーベン・フリーズと対面します。普段は下から見上げる壁画ですが、その時は、特別に、同じ高さまで上れる足場が組んであり、文字通り、目の前にある作品の金泥の盛り上がりの凹凸まで、触れられるような距離で見られたのは、忘れられません。

 それ以降、ウィーンを訪れた際は、必ず、ここを訪れています。
誰かにウィーンのオススメを聞かれたら、やっぱりここは外せません。
ネットのクチコミなどには、クリムトの1作品の為だけにチケットが高いとか、クリムトファン以外は、外観を眺めればオッケーみたいな書込みも見受けられるようですが、ここは声を大にして言いたい。

 「もしも、目の前まで行ったのならば、必ず中までご覧いただくことを、強く、オススメします」

 さて、このオンラインミュージアムショップは、美術作品や、ミュージアムの解説が目的ではありません。そういう情報は、本来、書くべき方々が沢山いらっしゃいますし、既に書籍もたくさんあります。ですから、ここではあくまでも、ミュージアムショップの企画者として、必要最低限の情報だけを書くように心がけます。

 話は戻りましょう。

 セセッシオンの直訳的な意味は「分離、別れること」です。何と分離したのか。それは、19世紀末にかけてウィーンで約30年間もチカラを持っていた芸術家協会とでした。彼らはクンストラーハウスという展示場所を持ち、ヨーロッパにアール・ヌーボーや、印象派など、芸術の新しい波が起きているにも関わらず、伝統を重んじ、とても保守的な団体でした。そこにわかれを告げ、新たな団体を結成した中心人物こそがクリムトで、その新しい団体の正式名が、オーストリア造形芸術家協会、通称ウィーン分離派なのです。
その彼ら専用の展示場として新たに建造したのがここ、分離派会館でした。

 真っ白な建物に金色の月桂樹のドームが象徴的です。

 才能溢れる若い芸術家達が、時代に変化をおこし、実業家の支援を受けながら、つくったこの建物は、単なる展示場所ではなく、新たな総合芸術のあり方を提示した、活動のシンボルでもあった訳ですよね。応援したくなります。

 建物正面には、当時、彼らが掲げた言葉が残されています。

 

時代にふさわしい芸術を
その芸術には、自由を!

 カッコいいと思いませんか。

 クリムトをはじめ、分離派に参加したメンバーがまた、本当に才能豊かな人達ばかりで、この時代のウィーンという小さな街に、何が起こっていたのか。もしもタイムマシーンがあって(ついでにドイツ語もペラペラならば)彼らの集まるカフェに行って、お話を聞いてみたい。いえ、彼らを遠目に眺められるだけも、どんなに楽しい事でしょう。

その後、1898年から1905年までの7年間で、この場所を舞台として、20回を超える展覧会「分離派展(セセッシオン)」が開催される事になります。その間には、フランス、日本など、同時期の世界の美術も紹介する事で、自分達自身も、さまざまな文化を吸収していきます。特に日本からの影響は、とても大きかったようです。19世紀の日本は、ヨーロッパの人達にとって、とても異国であり、とてもオリジナリティのある、刺激的な存在だったのですよね。

 そして、今回ポスターをご紹介する、クリムトの作品「ベートーヴェン・フリーズ」は、1902年、第14回の分離派展のテーマ「ベートーヴェン」に合わせてクリムトが出品した作品になります。

 その展覧会では、部屋の中央に彫刻家マックス・クリンガーがベートーヴェン像を置き、それを取り囲むように壁画が描かれました。フリーズとは、壁面装飾画を意味します。ここでクリムトは全長34メートルを超える、絵巻物のような大壁画で、ベートーヴェンの「交響曲第九番(第九)」を表現しました。
クライマックスの第四楽章「歓喜の歌」の場面では花を手にした天使達が歌う中、裸の男女が抱擁している姿は、シラーの詩そのものといえます。

 Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
抱擁を受けよ、もろびとよ。
全世界の接吻を受けよ!

この展覧会のオープニングには、作曲家グスタフ・マーラーが、「第九」の第4楽章を自らアレンジしたものを演奏したそうです。

 展示設計(建築)、彫刻、絵画、そして音楽。様々なジャンルの芸術が、枠組みを超えて、ベートーヴェンをテーマに新しい芸術表現が、まさに総合芸術が生まれた場所、それが、この分離派会館なのです。

先日、Twitterを通じて、ショップに載せる写真を撮ってくださるボランティアを募集したところ、一晩で10人を超える応募があり、その人たちの応援を頂くことになりました。今回の、分離派会館と、次回配信予定のテートミュージアムの回は、末松千夏さんと、山田理恵さんのお二人が、撮影くださった写真をもとに、ページをつくってあります。お二人共、とても真剣に、でも楽しそうに撮影してくださいました。それは、画像にも表れていると思います。心から感謝しています。ありがとうございました。

それでは、分離派会館のポスターをご覧ください。

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Plakat zu Secessionsausstellungen: Joseph Maria Olbrich, 1898
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