英国、ロンドンにある、RAことロイヤルアカデミー(以下RA)。美術ファンなら、存在は知ってるという方も多いかと思います。ただ、ロンドンの他のミュージアムに比べると、少しばかり馴染みが薄いかもしれません。(僕の、個人的な印象です)
でもでも、でも、ですね!
ここは英国の美術の世界において、ものすごく、重要なところなので、ぜひ、知っておいていただきたいと、Eastとしては、そう思うところなのです。そんな訳で、今週から数回に渡って、RAをご紹介させて頂きます。
まずは、RAについて。
時は18世紀中頃。7年戦争が終わって5年後の1768年、世界一の大国となった英国の王様、ジョージ3世のもと、英国美術の発展、芸術家の育成の為につくられた、団体なのです。現在も、芸術家を支援育成する学校としての「ロイヤルアカデミースクール」と英国美術界の権威「ロイヤルアカデミー」そして、「ミュージアム」としての活動が続いています。
ここでスクールについて豆知識。(訂正や補足、もしくは追加情報、大歓迎です。そっと、メールで教えてくれると、尚、嬉しい)
毎年、10〜17人くらいが、入学できます。
期間は3年間。学費は無料。例外を除いて、合格者のほとんどは、大学卒、美術を学んだ人。年齢制限は特にないけれど、今いる人は、20代なかばから40代。入試は、ポートフォリオ審査と、面接があるんだそうです。ちなみに2021年はコロナの影響で、新しい学生は取らないとのこと。残念。。。
そして、RA。こちらには、ターナー、コンスタブル、そしてホックニーも正会員(ロイヤルアカデミシャン)に名を連ねた、英国美術界の権威です。
75歳以下の英国で活躍中の芸術家、建築家にその資格がありますが、最大人数が80人と決まっている為、毎年、1、2名しか、新たに正会員になれません。また、なる場合も、アカデミー正会員による推薦があったのち、更に8名の推薦が集まってから、ようやく最終決定の選挙に辿り着けるという狭き門です。
あの、ターナーがエリートだと言われる逸話に、彼が14歳の時には、ロイヤルアカデミースクールに通い、15歳の時、サマーエキシビションに出品し、26歳の若さでRAの正会員に到達したというものがあります。いつの時代にも、天才と呼ばれるような特殊な人が現れるんですね。
ちなみにちなみに、オフィーリアを描いたあの、J.E.ミレイは、ななな、なんと、11歳にして、スクールに通い、それは、史上最年少記録として、今もなお破られていないのだとか。彼のあだ名が「The Child(ザ・チャイルド)」。。。ものすごく、腑に落ちるネーミングです。
また、ターナーのライバルと呼ばれた、コンスタブルも、RAの正会員になりますが、それが認められたのは、53歳の時、彼は苦労人と言われますが、そのターナーとの対比もそれぞれにファンが多いところなのかもしれません。
また、RAの正会員になると、自分の名前の後ろにRAと書き記す事が許されます。コンスタブルの作品の中にもそういうサインが残っているものがありますので、展覧会の時には、探してみてください。
それにしても、このRAが発足以来250年もの間、欠かさず、公募展を開催していたという事は、二度の世界大戦中も、やっていたことになるのですが、それが、2020年、新型コロナの影響で、その歴史上はじめて、夏に開催出来なかったというのですから、新型コロナの影響の大きさをものがたります。
それでも、そこはしぶとく、大英帝国の誇りにかけて、2020年のロイヤル・アカデミー・サマーエキシビションは、ウィンターシーズンに開催される事になりました。拍手!!
この、世界最古にして最大の公募展、ザ・サマーエキシビションについては、次回また、書きたいとおもいます。(つづく)
いよいよ今週は、RAがRAであり続ける象徴のような展覧会「サマーエキシビション」についてです。
1768年に設立されて、その翌年から開催され続けてきた、世界最古の公募展です。
当初は 'The Exhibition' と呼ばれていましたが、その後1870年に、冬にも美術展を開催し始めたので、それと区別する為に 'Summer Exhibition' と呼ぶようになったと言われています。
記念すべき第一回展には、56人の作家から、136作品が、出展されたそうです。
ちなみに、今年は18,000点の応募の中から、1,100点が展示されました。
一般の人も、一点あたり35ポンド(約5,000円)を支払えば、2点までは応募は可能です。
その中から、選ばれた作品だけが展示されます。
展覧会と言えば図録ですが、カタログは、1780年にはつくられていて、そこにはギャラリーの地図と、展示作品のリスト、そしてアルファベット順に出品者のリストがありました。図版が加わったのは1916年からなのだそうです。
最近では、約20万人の入場者がありましたが、250周年記念イヤーだった2018年には、例年の1.5倍、約30万人が訪れたそうです。記録によれば、1769年の第一回展の入場者数は、14,000人だったそう。それが、多いのか少ないのか、今ひとつわかりにくいですけれど、250年前に、既に今と同じ展覧会が、開かれていた事、それがそのまま続いて来ている事、それだけでも、感動します。
元々この展覧会は、ゲインズバラ、レイノルズ、ターナー、コンスタブルなど、その時代の芸術家達が、互いに、刺激しあう場所でありましたが、今ではもっとアートフェアとしての要素、現代美術展として、現役の現存アーティストが、多くの人に作品を見てもらう場所となっています。
面白いのは、展示作品のすべてに価格が付けられている事です。そうなんです。買える、現代美術展なんです。
作品が売れる事になると、RAは販売価格の30%を手数料として徴収します。また展覧会から12ヶ月以内に販売された場合も対象となります。そうしたお金がRAスクールの資金や、展覧会開催の為に活用されるのです。
RAは完全独立組織であり、入場料、寄付、スポンサー、パトロン、ロイヤルメンバーから得られる収入で運営管理されていて、公的資金が投入されていないんだそうです。応援したくなりますよね。
さて、ここからは豆知識的な事も。
「Red Dot」
売却済みの作品には、1865年からは、星マークがつけられはじめます。それがいつの頃からか、赤いdotに変わりました。今では、アートフェアなどでは当たり前になったその光景も、RAが元祖です。
「設営について」
絵画は壁いっぱいに並べられていて、どこに自分の作品が飾られるか、特に18世紀には激しい争いがありました。目に入りづらい、壁の上の方に掛けられることを 'skied' (空にされる)という表現ができたぐらいです。
有名なところでは、トーマス・ゲインズバラやジョン・コンスタブルもskiedされたことがあるそう。きっと悔しい思いをしたんでしょうね。
サマー・エキシビション壁に飾る作品は、RA正会員が選び、ハンギングコミティ(Hanging Committee)と呼ばれる設営チームが、8日間かけて設営します。飾られたあとは、変更は出来ません。
設営チームには、エネルギー補給のために「ビーフ・ティー」と呼ばれるものが配給されます。コンソメみたいなものという説もありますが、詳細なレシピは秘密。シェリーが入っているとか?謎に包まれています。日本人で飲んだ事ある人いるのかな。。
「Varnishing Day」 (ヴァーニシング・デー)
'Varnishing Day' とは歴史的には、一般公開される前に出展者たちが最後の仕上げを行う日でしたが、現在では、出展者がSt. James Churchでの礼拝に、参列してから、ギャラリーで、レセプションが開催される日になっています。
Varnishing Dayという作名前の作品もあります。その絵の中では、ターナーが自分の作品に手を加えている様子が描かれています。
1800年代、ターナーは自分の絵が見劣りすると思った場合、自分の作品にだけでなく、他の人の作品にも、手を加えていたという驚きの目撃情報も残されています。
1862年からは、労働者階級の人にも美術を楽しんでもらおうと午後10時半までの夜間開館を開始しました。
過去のRAの展覧会には、今では信じられない程多くの人数が訪れていました。
1日平均の最多記録は、1999年に開催されたモネ展で8,698人/日。会期最終の週末には、土曜の朝8時から日曜の18時まで開館し、英国のミュージアムでは、初のオールナイト開館することとなりました。